AMR導入成功事例ファイル

【成功事例】アフターサービス向け物流、AMR導入で部品供給の即応性と在庫管理精度を向上

Tags: AMR, サービス部品, 物流倉庫, 在庫管理, 生産性向上

導入企業の概要

本事例は、大手産業機械メーカーの子会社である、物流サービス専門企業におけるAMR導入成功事例です。同社は親会社のアフターサービス部門と連携し、全国のサービス拠点や顧客へ迅速に交換部品を供給する物流網を担っています。今回AMRを導入したのは、国内の中核となるサービス部品倉庫(約5,000坪)です。この倉庫では、数十万点におよぶ膨大な種類の部品を取り扱っており、迅速かつ正確なピッキング・出荷が求められています。

AMR導入前の課題

サービス部品物流は、製品が稼働し続けるために不可欠であり、多種多様な部品を少量から、かつ迅速に供給する必要があります。しかし、AMR導入以前の同倉庫では、以下のような課題を抱えていました。

これらの課題は、将来的な事業拡大や顧客サービスレベルの維持・向上において大きな足かせとなることが懸念されていました。

導入したAMRとシステム

これらの課題を解決するため、同社は棚搬送型AMR(Goods-to-Personシステム)を導入しました。これは、作業員が固定されたピッキングステーションで待機し、AMRが指示された棚を作業員の前まで搬送してくる仕組みです。

導入されたシステム構成は以下の通りです。

このシステム連携により、「人が棚まで行く」のではなく「棚が人まで来る」という全く新しいピッキングプロセスが実現しました。

導入プロセスと期間

AMR導入プロジェクトは、約1年3ヶ月をかけて段階的に進められました。

  1. 計画・要件定義 (3ヶ月): 現状の課題とあるべき姿を詳細に分析し、AMR導入の目的、システム要件、対象エリア、期待効果などを定義しました。
  2. ベンダー選定・PoC (4ヶ月): 複数のAMRベンダーを比較検討し、実際の倉庫環境に近い状況でAMRの動作、システム連携、現場での作業フローなどを検証するPoC(概念実証)を実施しました。
  3. システム設計・導入・テスト (6ヶ月): 選定したベンダーと詳細設計を進め、WMS改修、AMR制御システムの構築、倉庫内のレイアウト変更(AMR走行エリアの整備、ピッキングステーション設置)、AMR本体の設置、システム連携テスト、運用テストを実施しました。
  4. 段階的な稼働開始: 一部のピッキングエリアからAMRシステムでの稼働を開始し、現場の習熟度やシステム安定性を見ながら、対象エリアを順次拡大していきました。

PoCを含む事前の検証を丁寧に行い、現場の意見を取り入れながら段階的に進めたことが、その後のスムーズな本格稼働に繋がりました。

導入効果

AMR導入は、同社のサービス部品物流に目覚ましい効果をもたらしました。特に、読者ペルソナである物流会社の役員様が重視するであろう経営への影響は顕著です。

導入における課題と解決策

AMR導入は順調に進みましたが、いくつかの課題も発生しました。

成功の要因・ポイント

本事例が成功に至った主要な要因は以下の点に集約されます。

今後の展望

AMR導入によるピッキング作業の革新は、同社の物流オペレーションの柔軟性と生産性を飛躍的に向上させました。今後は、AMR導入エリアを段階的に拡大していく計画です。さらに、入庫・補充作業へのAMR活用や、AMRが収集する稼働データとWMSの在庫・出荷データを統合的に分析し、より高度な需要予測に基づく適正在庫管理、さらにはサプライチェーン全体の可視化・最適化にも繋げていくことを目指しています。本拠点で得られた知見を活かし、他の国内拠点や海外拠点への横展開も視野に入れています。AMRは単なる自動化ツールとしてだけでなく、将来的な物流ネットワーク全体の変革を推進する基盤として位置づけられています。