AMR導入成功事例ファイル

【成功事例】店舗供給物流センター、AMRによる出荷仕分け自動化で波動対応力と精度を強化

Tags: AMR, 物流倉庫, 小売業, 仕分け自動化, 生産性向上

導入企業の概要

本事例は、全国に300を超える店舗を展開する大手ホームセンターチェーン企業様の、関東圏に位置する主要物流センター(DC: Distribution Center)におけるAMR導入事例です。この物流センターは、主に関東圏の約50店舗への商品供給を担っており、一部EC向けの出荷作業も行っています。取り扱い商品は日用品、DIY用品、園芸用品など多岐にわたり、店舗からの少量・多頻度発注にきめ細かく対応しています。

AMR導入前の課題

この物流センターでは、AMR導入検討以前からいくつかの重要な課題を抱えていました。

これらの課題は、物流コストの増加やサービス品質の維持・向上を阻害し、企業の競争力強化の足かせとなる可能性を秘めていました。

導入したAMRとシステム

課題解決のため、本事例では「協働型ピッキング支援AMR」を導入しました。これは、作業員がピッキングした商品をAMRに乗せ、AMRが指定された仕分け場所まで自律的に搬送するタイプのロボットです。

導入システムは以下の通りです。

このシステムにより、作業員は重い商品を搬送する負担から解放され、ピッキング作業そのものや、AMRに指示通り商品を積載する作業に集中できるようになります。AMRは正確な位置情報に基づいて指定の仕分け先へ迷わず移動するため、仕分けミス防止にも貢献します。

導入プロセスと期間

AMR導入は段階的に進められました。

  1. 計画・要件定義(約3ヶ月): 既存の作業フロー分析、ボトルネック特定、AMR導入による効果目標設定、システム連携要件の定義を実施しました。現場の作業員や管理職との密なヒアリングを行い、課題と期待する効果を共有しました。
  2. システム設計・開発・テスト(約4ヶ月): WMSとAMR制御システム間の連携インターフェース設計、搬送ルートの最適化アルゴリズム開発、シミュレーションを行いました。テスト環境でのシステム連携テストを繰り返し実施しました。
  3. 現場トライアル・調整(約2ヶ月): 実際の倉庫の一部エリアで数台のAMRを使用したトライアルを実施しました。作業員への操作研修を行い、実際の運用上の課題(AMRの動線、作業員との協働、充電タイミングなど)を洗い出し、システムや運用ルールにフィードバックして調整を行いました。
  4. 本格稼働・導入エリア拡大(約1ヶ月〜): トライアルでの課題解決と効果確認後、本格稼働を開始しました。その後、順次導入エリアとAMR台数を増やしていき、センター全体への導入を進めました。

全体として、計画から本格稼働までには約10ヶ月を要しました。既存のオペレーションを止めずに、段階的に導入を進めることで、事業への影響を最小限に抑えることができました。

導入効果

AMR導入により、計画通り、あるいはそれを上回る具体的な成果が得られました。

これらの数値は、単なる効率化に留まらず、コスト構造の改善や将来的な事業成長の基盤強化に直結する成果と言えます。

導入における課題と解決策

導入プロセスにおいてはいくつかの課題に直面しましたが、適切な対策により乗り越えることができました。

これらの課題に対し、関係者間の丁寧なコミュニケーションと計画的な準備、トライアル期間での評価と改善を徹底したことが、スムーズな導入に繋がりました。

成功の要因・ポイント

本事例が成功した主な要因は以下の点に集約されます。

今後の展望

AMR導入による今回の成果を受け、このホームセンターチェーン企業様は、物流オペレーションの更なる革新に向けて前向きな展望を描いています。

まずは、今回成功した関東圏DCでの運用ノウハウを活かし、他の地域DCへのAMR導入を順次拡大していく計画です。これにより、全社的な物流効率化とコスト削減を目指します。

また、今回のピッキング支援・仕分け搬送におけるAMR活用に加え、入庫時の検品・棚入れ支援や、定期的な棚卸し作業における活用など、他の物流プロセスへのAMR適用拡大も検討しています。

将来的には、物流センター内のAMRシステムと、輸配送管理システム(TMS)との連携をさらに強化することで、物流センター内の効率化だけでなく、店舗への輸配送ルート最適化や積載効率向上など、物流サプライチェーン全体での効率化・最適化を目指していく方針です。これにより、変化の激しい小売業界において、より迅速かつ効率的な店舗供給体制を構築し、競争力の維持・強化を図っていく考えです。