AMR導入成功事例ファイル

【成功事例】フローズン倉庫におけるAMR導入が過酷な作業環境下の省人化と生産性向上を両立

Tags: AMR, フローズン倉庫, 冷凍倉庫, 物流自動化, 省人化, 生産性向上, 成功事例

導入企業の概要

今回ご紹介する成功事例は、冷凍食品およびチルド食品の卸売業を展開する中堅企業、株式会社コールドチェーンロジスティクス(仮称)様です。同社は全国に物流拠点を展開し、特に-20℃以下のフローズン帯と0℃〜5℃のチルド帯を併せ持つ大型物流センターを主力としています。ここでは、年間を通じて安定した食品供給を担う上で、過酷な低温環境下での作業効率化と人手不足への対応が喫緊の課題となっていました。

AMR導入前の課題

株式会社コールドチェーンロジスティクス様では、AMR導入以前、以下のような複数の深刻な課題に直面していました。

これらの課題を解決し、持続可能な物流体制を構築するために、同社は新たな技術、特に自動化ソリューションの導入を検討し始めました。

導入したAMRとシステム

同社が導入したのは、低温環境(-25℃まで対応)に特化した棚搬送型AMRと、既存のWMS(Warehouse Management System)を連携させるためのAMR制御システムです。

技術的な詳細よりも、これらのシステム連携によって「作業員が低温環境に滞在する時間を最小限にする」「WMSの正確な情報に基づいてAMRが動くことでピッキング精度を高める」「複数AMRの協調により全体の処理能力を向上させる」といった、課題解決に直結する機能が成功の鍵となりました。

導入プロセスと期間

AMR導入プロジェクトは、以下のプロセスを経て約1年で本格稼働に至りました。

  1. 要件定義・ベンダー選定(3ヶ月): 低温対応という特殊要件を満たすAMRベンダーの調査・選定から開始。複数ベンダーの低温環境での実証実験データや、既存WMSとの連携実績などを慎重に評価しました。
  2. システム設計・WMS改修(4ヶ月): 選定したベンダーと協力し、既存WMSとAMR制御システムの連携設計、AMRの最適な稼働エリア設計、ピッキングステーションのレイアウト設計などを実施。WMSの必要な改修を行いました。
  3. テスト導入・実証実験(3ヶ月): 特定の小エリアに少数のAMRを先行導入し、実際の低温環境下での稼働安定性、バッテリー性能、WMS連携の正確性、作業員との連携などを徹底的に検証しました。ここで得られたデータに基づき、システムや運用フローの調整を行いました。
  4. 本格導入・エリア拡張(2ヶ月): テスト結果を踏まえ、対象エリアとAMR台数を段階的に拡張。並行して、AMRオペレーターや保守担当者への研修を実施しました。
  5. 全面稼働・効果検証: 想定されたエリアでのAMR運用を開始。継続的に稼働データや効果データを収集・分析し、さらなる改善点や拡張計画の検討を行っています。

特に低温環境での実証実験は入念に行われ、機器の耐久性や充電効率に関する懸念点を事前に洗い出し、対策を講じることができました。

導入効果

AMR導入により、株式会社コールドチェーンロジスティクス様は計画を上回る成果を達成しました。

これらの具体的な数値成果は、AMR導入が単なる自動化ではなく、経営課題の解決に直結する戦略的な投資であったことを明確に示しています。

導入における課題と解決策

特殊な環境下での導入であったため、いくつかの課題が発生しました。

成功の要因・ポイント

この事例が成功した主な要因は以下の通りです。

今後の展望

AMR導入により物流体制の革新に成功した株式会社コールドチェーンロジスティクス様は、今後さらなるAMR活用の拡大を計画しています。

現在AMRを導入しているフローズンエリアに加え、隣接するチルドエリアへのAMR導入も検討を進めています。また、入庫時の検品・格納作業や、出荷時の検品・積み付け支援など、ピッキング以外の倉庫作業へのAMR活用も視野に入れています。将来的には、AMRから収集される膨大な稼働データやピッキングデータを分析し、更なる効率化やコスト削減、需要予測に基づいた最適な在庫配置などを実現するためのデータ活用基盤の構築も目指しています。

AMRを核とした自動化・省力化をさらに推進することで、過酷な環境下での作業負担を軽減しつつ、変化する市場ニーズに迅速に対応できる、より強くしなやかな物流ネットワークの構築を目指しています。この事例は、特殊な環境であっても適切なAMRとシステム連携、そして周到な計画と実行により、大きな成果を上げられることを証明しています。