AMR導入成功事例ファイル

【成功事例】医薬品・医療機器物流、AMRで厳格な品質管理とコスト効率化を達成

Tags: AMR, 医薬品物流, 医療機器物流, 品質管理, 物流効率化, 成功事例

医薬品・医療機器物流におけるAMR導入成功事例:品質管理とコスト効率化の両立

本記事では、国内大手医薬品・医療機器卸売業者が、物流センターにAMR(自律走行搬送ロボット)を導入し、医薬品・医療機器物流に求められる厳格な品質管理体制を維持しつつ、物流コストの効率化と生産性向上を実現した事例をご紹介します。

導入企業の概要

今回ご紹介するのは、全国に物流ネットワークを展開する、創業60年以上の歴史を持つ国内大手医薬品・医療機器卸売業者であるA社様です。特に医療機関向けの医薬品および医療機器の安定供給を担っており、その物流センターは多種多様な品目を取り扱い、高度な品質管理が求められる環境にあります。本事例の対象となったのは、同社の主要な地域ハブ物流センターの一つで、日々の大量の出荷業務と厳格な入出荷管理を担っています。

AMR導入前の課題

A社様では、AMR導入以前から以下のような課題を抱えていらっしゃいました。

これらの課題は、物流運営コストを押し上げるだけでなく、サービスの品質維持や競争力強化の大きな障壁となっていました。

導入したAMRとシステム

A社様が導入したのは、主に倉庫内のピッキング作業を支援するGoods-to-Person(GTP)型のAMRです。作業者が定位置に待機し、AMRが商品棚を作業者の元へ搬送する方式を採用しました。

このAMRシステムは、既存のWMS(倉庫管理システム)と密接に連携しています。WMSからの出荷指示データに基づき、最適な経路で該当する商品棚を搭載したAMRが作業者のステーションへ自動で搬送します。作業者は、AMRが示すディスプレイの指示に従い、必要な数量の商品をピッキングします。

このシステム連携において重要だったのは、医薬品・医療機器に必須となるロット情報や有効期限情報の管理機能です。AMRはWMSから送られるこれらの情報を正確に認識し、ピッキング時に作業者が指定されたロット・有効期限の商品を確実に選択できるようガイドします。これにより、手作業による目視確認の負担とミスリスクを大幅に低減しました。

導入プロセスと期間

AMRシステムの導入プロセスは、約10ヶ月の期間をかけて段階的に進められました。

  1. 要件定義・システム設計(約2ヶ月): 既存のWMSとの連携仕様、必要なAMR台数、ステーションレイアウト、医薬品・医療機器特有の管理項目(ロット、有効期限など)のシステム連携方法などを詳細に検討しました。
  2. 試験導入(約3ヶ月): 物流センター内の一部のエリアに限定して少数のAMRとステーションを設置し、実運用に近い形での試験運用を実施しました。この段階で、システム連携の課題抽出や、現場作業者の習熟度向上、運用フローの改善を行いました。
  3. 本格導入・展開(約5ヶ月): 試験導入での成果を踏まえ、対象エリアを拡大し、AMR台数を増やして本格運用を開始しました。段階的に導入エリアを広げながら、並行して全作業者へのトレーニングを実施しました。

この段階的な導入により、リスクを最小限に抑えつつ、現場の習熟度に合わせてスムーズな移行を実現しました。

導入効果

AMR導入により、A社様では以下のような具体的な成果を達成されました。

これらの効果は、単なる作業効率化に留まらず、医薬品・医療機器物流における最重要課題である「品質管理の徹底」に大きく寄与しながら、経営におけるコスト構造の改善と将来的な成長に向けた基盤強化を実現したと言えます。

導入における課題と解決策

導入にあたっては、既存のWMSとの連携調整や、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく各種要件へのシステム対応が主要な課題でした。

これらの課題に対しては、AMRベンダーおよびWMSベンダーとの緊密な連携が鍵となりました。特に、ロット・有効期限管理や出荷先に応じたきめ細やかな管理要件については、カスタマイズ開発を含む徹底した事前検証と連携テストを繰り返し実施することで対応しました。また、現場作業者に対しては、システムの操作研修だけでなく、AMR導入の目的や期待される効果、品質管理におけるシステム活用の重要性などを丁寧に説明し、理解と協力を得るためのコミュニケーションを重視しました。

成功の要因・ポイント

本事例が成功に至った主な要因は以下の通りです。

今後の展望

A社様では、今回の主要物流センターでの成功事例を踏まえ、今後数年かけて他の地域物流センターへのAMRシステム展開を計画されています。また、AMRを活用した棚卸作業の効率化や、温度管理システムのデータとの連携による更なる品質管理の高度化なども検討されており、AMRを核とした物流DXを推進していく方針です。これにより、サプライチェーン全体の可視化と効率化を進め、医薬品・医療機器の安定供給と医療現場への貢献をさらに強化していくことを目指しています。