AMR導入成功事例ファイル

【成功事例】3PL事業者がAMR導入で複数顧客向け倉庫の保管効率とBCP対応力を向上

Tags: AMR, 3PL, 物流倉庫, 保管効率, BCP, 成功事例

導入企業の概要

本記事でご紹介するのは、全国に複数の物流拠点を持ち、多様な業種の顧客に対して包括的な物流サービスを提供する3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業者のロジリンクス株式会社(仮称)様の事例です。同社は、アパレル、消費財、部品など、在庫特性や出荷頻度が大きく異なる複数の顧客製品を一つの拠点で扱うケースが多く、特に保管効率と柔軟なリソース配分が課題となっていました。今回のAMR導入は、特に中小規模の複数拠点における、多様な顧客ニーズへの対応力強化と、事業継続計画(BCP)への対応力向上を目的として実施されました。

AMR導入前の課題

ロジリンクス株式会社様では、AMR導入以前、以下のような複数の課題を抱えていました。

導入したAMRとシステム

これらの課題解決のため、ロジリンクス株式会社様が導入したのは、主に棚搬送型のAMR(Goods To Person: GTP)です。特に、同社の高密度保管エリアの狭通路での運用を考慮し、機動性の高い小型モデルを選定しました。

導入したAMRは、既存のWMS(倉庫管理システム)と連携する形で稼働しています。WMSからのピッキング指示に基づき、AMRが該当する在庫棚を作業ステーションまで自動で搬送します。これにより、作業員は広大な倉庫内を移動することなく、定点でピッキング作業に集中できるようになりました。

システム面では、AMR群を効率的に管理・制御するFMS(Fleet Management System)が導入されました。このFMSは複数拠点のAMRを一元管理できる機能を持ち、拠点ごとの物量やAMRの稼働状況に応じて、最適なタスク割り当てや移動経路計画をリアルタイムで行います。また、将来的には顧客データと連携した簡易的な需要予測システムとも連携させ、事前に最適な棚配置を行うことなども視野に入れています。

導入プロセスと期間

AMR導入は、特定のモデル拠点でのPoC(概念実証)から開始されました。約3ヶ月間のPoCで、実際の運用環境下でのAMRの性能、既存システムとの連携、現場作業への影響などを詳細に検証しました。

PoCでの成功を確認後、本格的な導入フェーズに移行しました。まずは、保管効率と人手不足の課題が特に顕著であった複数の中小規模拠点に順次展開しました。導入プロセスは以下の通りです。

  1. 詳細設計: PoCの結果を踏まえ、拠点ごとのレイアウト、WMSとの連携方法、作業フローの設計。
  2. システム開発・連携: WMSとAMR制御システム(FMS)間のAPI連携開発。
  3. インフラ整備: AMR走行エリアの環境整備、Wi-Fi環境強化、充電ステーション設置。
  4. AMR搬入・セットアップ: AMR本体および関連機器の設置、システム設定。
  5. 現場トレーニング: 作業員へのAMR操作、連携システムの使用方法、安全教育。
  6. 段階的な運用開始: 特定の作業エリアからAMR運用を開始し、徐々に範囲を拡大。

PoC開始から複数拠点での本格稼働まで、全体で約1年の期間を要しました。特にWMSとの連携開発に多くの時間を要しましたが、段階的な導入により、リスクを抑えながら着実に進めることができました。

導入効果

AMR導入により、ロジリンクス株式会社様では以下のような具体的な効果が得られました。

導入における課題と解決策

導入プロセスにおいては、いくつかの課題に直面しましたが、適切な対策を講じることで乗り越えました。

成功の要因・ポイント

今回のロジリンクス株式会社様におけるAMR導入成功は、以下の要因が挙げられます。

今後の展望

AMR導入による成功体験を経て、ロジリンクス株式会社様は今後の物流戦略において、さらなる自動化・省力化を推進していく方針です。

今後は、今回AMRを導入した拠点での活用範囲を、ピッキング作業だけでなく、入庫時の棚への補充作業や、定期的な棚卸し、返品処理などの他の庫内作業にも拡大していくことを検討しています。

また、AMR導入拠点を他の大規模拠点や専門性の高い拠点にも広げ、全社的な物流ネットワークの最適化を目指します。AMRから収集される膨大なデータを活用し、AIによるより高度な在庫配置最適化や、AMR・人員の最適なリソース配分計画なども視野に入れています。

今回のAMR導入は、単なる作業効率化に留まらず、多様な顧客ニーズへの対応、事業継続計画(BCP)への備え、そして新たな顧客への価値提供といった、3PL事業の競争力を高める重要な一歩となりました。今後も、技術の進化を取り入れながら、変化する物流ニーズに柔軟に対応していく姿勢が、ロジリンクス株式会社様のさらなる成長を支えていくことでしょう。